カネカ育休炎上で考える 前向きに男性育休を支援するには

  • 2019年06月13日

6月上旬に起こったカネカの育休後転勤のSNS炎上は、当事者同士のダンマリで収束しつつある。
退職命令の違法性や転勤制度の是非については、有識者が語っているのでそちらに譲る。

 

私としてはなぜここまで炎上したのかということを、昭和世代や子育てを経験していない人に認識を持ってもらいたくコラムを書く。

 

ここまでの社会的関心事になったのは、私自身は「父親の育休取得の見せしめ」「乳飲み子がいる家庭に対するワンオペハラスメント」に端を発して、日本社会の中で子育てをすることに対する無知や配慮のなさ、そして次世代を育むことに対するプライオリティがあまりにも低いことに怒りのマグマが噴出したのだと思う。それは以前にもSNSで炎上した「保育園落ちた、日本死ね」と同様の現象だ。

 

 

よく子育ては「プライベートなこと(個人の事情)だ」と言い放つ人がいる。
もちろん、子供を持つ持たないはいろいろな事情があるのはわかっている。
「子ナシハラスメント」という言葉もあるくらいだから二項対立にするのは今まで避けてきた。こういうインターネット上で記事を読んで傷つく人がいるのも承知している。

 

 

しかし、「子育てをプライベートなこと(個人の事情)だ」と言う人に問いたい。

 

あなたが将来、年金をもらう立場になったときの納税者は誰ですか?

 

 

子育ては決して「私的」なことではないのだ。私たち共働きは自分も納税者として稼ぎ、将来の納税者も育てている。「公的」なことだ。

 


ああ、正論を振りかざしてしまった。いつもは正論を吐いても共感してもらえないので、言わないでいるのだが、言わないと気づいてもらえないことが多いので、今回はあえて言う。

 

 

私は日本以外で子育てをしたことがないから主観でしかないが、書籍や講演でフランスや北欧の子育てを見聞きする限り、日本は母となった女性が出産した後、外的環境の制度の不備や旧来の男女の伝統的価値観によって、辛い思いをすることが多い。
それが日本の女性が経済社会や政治の分野で活躍できない原因であり、先進国の中でも超低いジェンダーギャップ指数149か国中110位(出所:世界経済フォーラム(World Economic Forum)2018年12月)というお粗末さに表れている。

 

そもそも日本の産休・育休制度はアジア諸国やアメリカと比較すると充実している。
しかし、なぜこんなに子育て当事者は苦しいのか。

 

私は多くのワーキングマザーのキャリア支援をしてきた経験からいうが、「子育て中の部下を理解しないマネジメント」だったり、配慮しているつもりが、本人意向を確認しない配慮で「排除」につながっていることが多い。だからやる気をなくすし、対立する。あるいは、その場からいなくなる選択をする。

 

折しも国会議員内で男性の育休『義務化』を目指す議員連盟(仮称)が発足し、法改正が議論されている。男性の産休・育休の議論のステージが上がりそうな気配がある。

 

だとしたら、企業はこのカネカの炎上機会を活かして、男性の産・育休取得を社会的課題解決インターンのように捉え、プライオリティの高いものに思考転換してはどうかと思う

 

子育ては異文化体験でしかない。社会や人としての常識や前提を持ち合わせていない子どもから「おお、そんなふうに思うんだ!考えるんだ、へぇ〜!」という驚かされることの毎日である。

それを体験するだけで、認知の枠を広げざる得ないし、相手を受け入れる傾聴や承認のスキルが身につく。それは流動的で不確実性の高い時代に必要な非認知スキルだ。

 

そして子育てを通じて、地域社会の「公(おおやけ)」に接することで、行政制度や社会の不備に気づいたり、今まで自分が出会ったことがないよう多様な価値観、ライフスタイル、働き方をする人に触れることができる。

そうした人たちとの関係性構築をするには、自分をアップデートするしかないのだ。それはビジネスパーソンとして、必要なスキルではないか?

 

実際に北欧では、こうした子育て社員の強みを活かす経営がなされている
スウェーデンの子育て社員活用
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO83244480W5A210C1000000/

 

男性が産休・育休取得した場合でも、女性と同様に育児・家事、妻のケアで時間があっという間に経っていくことが予想される。もちろん産休・育休中は労働義務はないし、労働したとしても一時的、臨時的な就労と限定されている。

 

しかし自分の仕事の興味関心に紐づけて、産休・育休中の過ごし方の目標や課題を持たせてみることくらいならできるのではないか。現に弊社では産休・育休中の女性従業員にキャリアコンサルティングを提供することで、仕事へのモチベーションを維持し、スキルアップを目標設定したのちに復職してもらっている。
たとえばIT企業に勤めているのであれば、行政や社会コミュニティの課題を ITで解決するための芽を探してみるということも考えられる。
B to Cの業界あれば、パワーカップルと言われる共働き世帯がどんなアイテムを求めているかをリサーチすることもできるだろう。

自己啓発に励むのも良いだろう。実際に私は育休中に資格取得の勉強をした。

 

上記を課題として設定するのであれば、期間は一定の期間が必要だ。産・育休中に課した課題は社内の何らかの開発のネタに役立ててもいい。

実際、今や小学生の多くが持っている「キッズケータイ」は NTTドコモの子だくさんの男性社員の生活体験が開発に結びついた。

 

育休は今まで体験したことのない「生活者」としての体験をするようになる。
育児や介護といった日本の最重要課題に触れることでSDG sに本気で取り組むきっかけになる。だから、単なる育児のための休みではない。社会的課題解決のための越境体験くらいに思ってもらいたい。

 

多様な生活背景や価値観ギャップによる部下マネジメントの面倒くささは想像に難くないが、言葉を選ばずに言えば、部下の子育てを支援できない上司は、国を滅ぼさせることに加担していると言ってもいいくらいの岐路に立たされていると思う。

 

子育て社員を配慮するだけではない、思考を転換してポジティブに経営に生かしてもらいたい。

副業解禁や越境体験などを推奨するのと同時に、男性の産休・育休を社会的課題発見やスキルアップの機会と捉えてみてはどうか。

 

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